なぜ、カムチャツカ半島付近を震源とする地震による津波注意報がすぐに解除されないのか
- Yuka Kudo
- Jul 31
- 3 min read
ロシア極東沖で発生した巨大地震のあと、日本沿岸では長時間にわたって津波注意報が出続けています。「震源はロシアなのに、どうしてこんなに長引くの?」──気象庁の発表を見ながら疑問を抱いた方も多いでしょう。
実は、津波の旅路は私たちが思うよりずっと複雑です。震源からまっすぐ届く波だけでなく、太平洋の真ん中でぶつかって跳ね返る回り道ルートがあるからです。その主役の一つが、ハワイから日本へ弧を描く「天皇海山群」と呼ばれる海底の山脈です。

震源からのまっすぐ到来する津波だけじゃない
ロシア沖で地震が起きると、当然ですが発生直後の主な津波エネルギーは日本海溝を越えて直接日本列島へ向かいます。この一次波は到達が比較的早く、気象庁が最初に注意報や警報を出す根拠にもなります。ところが、それだけで話は終わりません。
深海 6000 m にそびえる「水中の巨大な壁」
震源の南方、太平洋のど真ん中には、深さ約 6000 m の海底から 4000 m 級の山々 が連なっています。これが天皇海山群です。もし海面まで届いていればエベレスト級の「島」になったであろう巨大な火山の列島が水面下に隠れている、そんなイメージです。
津波は水深が浅くなるほど速度が落ちてエネルギーの向きが変わりやすくなります。海面には見えないものの、この「水中の壁」に当たると波の一部が折り返し、日本列島へ再び向き直るのです。
太平洋をぐるぐる巡る「バウンド津波」
こうして生まれた反射波は、数時間かけて日本岸に再接近します。すでに第一次津波が通過し終えても、第二陣・第三陣のようにエネルギーの残りかすが押し寄せるため沿岸の潮位が通常に戻るまで長時間かかるわけです。
気象庁が「なお注意報を継続」と発表するとき、その裏では観測ブイのデータをもとに「まだ反射した波が太平洋を移動中か?」を解析しています。解除が遅いのは慎重というより、「津波が反射する迷路」が現実に起こっているためにほかなりません。
私たちができる備え
①長期戦を前提とする。
「もう揺れていない」「第一波が小さかった」などの印象で油断せず、正式な解除までは海に近づかない。
②リアルタイム情報をチェックする。
気象庁の発表に加え、沿岸自治体や港湾局の SNS・防災アプリもフォローしておく。
③地域ごとの海岸線の特徴を知る。
湾口が狭い入り江や防波堤のある港は、反射波で急激に潮位が上がることがあります。地元のハザードマップで危険エリアを確認しておきましょう。
「こんな小さな津波にいちいち心配しすぎ」「いつまで警戒したらいいんだ」とうんざりする声が世の中に見られますが、津波は見た目以上に“しぶとい”ものだと心に留め、備えましょう。